真の教会歴史を知るためには、一世紀まで歴史を遡らなければなりません。実は、神の回復の働きは一世紀あたりに始まり、それは教会が荒廃した時でした。

Ⅰ. 主の回復の開始

まず聖書の歴史を振り返りましょう。聖書は一世紀の終わりに完成しました。聖書を書いた最初の人はモーセでした。彼は主イエスが生まれるおよそ1500年前に、すなわち3500年前に聖書の最初の五冊の書を書きました。モーセの後、さまざまな場所に住み、さまざまな時代に生きていた他の人々が、続けて聖書を書きました。主イエスの誕生のおよそ400年前に、あるユダヤ人の聖書学者たちがモーセ五書と、神によって霊感を受けた人によって書かれた他の霊的な巻物を集めました。この材料が調べられた後、三十九巻から神の聖なる言として承認されました。これは旧約の各書です。

旧約の最後の書はマラキ書です。マラキ書の執筆から主イエスの誕生までおよそ400年の期間、それ以上、神聖な言葉は書かれませんでした。およそ2000年前、主イエスが生まれ、33年半地上で生活し、死んで、葬られ、復活し、昇天しました。聖霊が下ってきて、教会が生まれました。これが使徒行伝第2章に記されているペンテコステです。この後、人々は新約を書きました。初めに、多くの福音書がありましたが、それは調べられ、査定され、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四福音書だけが承認されました。福音書に続いて、使徒行伝があります。それはルカによって書かれました。使徒行伝の後、パウロの書簡があり、それはローマ人への手紙からヘブル人への手紙まで全部で十四巻あります。パウロは書簡をおおよそ54年から書き始め、およそ67年に完成しました。パウロの書簡に続いて、ヤコブの手紙、ペテロの手紙、ヨハネの手紙、ユダの手紙、ヨハネによって書かれた啓示録(ヨハネによる黙示録)があります。これらが新約の完全な文書です。

しかしながら、新約聖書は一世紀に調べられ、査定されたのではありません。それは一世紀の後、あらゆる場所の教会によって徐々に承認されてきました。一世紀の終わりの時、七巻の書、すなわち、ヘブル人への手紙、ヤコブの手紙、ペテロの第二の手紙、ヨハネの第二、第三の手紙、ユダの手紙、啓示録(ヨハネによる黙示録)は承認されていませんでした。キリスト教の教師たちが北アフリカのカルタゴでの会議のために集まった397年になってはじめて、これらの七巻の書は新約聖書の一部として承認され、新約には二十七巻あるということが結論づけられました。

A. パウロの完成する務め

一世紀末に、新約聖書はすべて承認されていたわけではありませんでしたが、神の啓示は完成しました。新約聖書の中心的な書物はパウロの書簡です。コロサイ人への手紙第1章25節でパウロは、彼の務めは「神の言葉を完成すること」であったと言います。これは、パウロが完成された神の言葉を書いたことを意味します。この完成する言葉の強調はキリストです。

パウロの書簡は、キリスト、その霊、命、教会について語っており、またキリストの死と復活について語っています。わたしたちはキリストの死と復活をおもに個人的な事柄として理解していますが、パウロがキリストの死と復活に関して語ることは、団体的な事柄、すなわち教会を強調します。ですから、パウロの神の言葉を完成する務めは、キリストが死と復活を通して、命を与える霊と成ってわたしたちの命となり、教会を生み出すことに関してです。これが、パウロが明らかにしていることであり、神の啓示です。

B. ヨハネの繕う務め

パウロの書簡が書かれた後、彼の死の前にさえ、完成された神の言葉は損害を受け、台無しにされました。このことは教会の堕落につながりました。結果として、およそ67年にパウロは、テモテへの第二の手紙を教会の堕落の予防注射として書いて、堕落の病原菌に対して戦いました。その後しばらくして、パウロは殉教しました。90年までにパウロの啓示は完全に破壊され、グノーシス主義などの多くの異端的な教えが教会の中へと入りました。

パウロの啓示と教会に対する損害のゆえに、主はヨハネを用いて繕う務めを行いました。ヨハネの務めは繕う務めです。繕うとは、壊れたものや傷ついたものを修理したり補修したりすることです。ヨハネは網を繕っている時に主イエスに召されました(マタイ4:21)。この繕う務めのために、ヨハネによる福音書、ヨハネの第一、第二、第三の手紙、啓示録が書かれました。ヨハネによって繕われた後、啓示のいくつかの点は、本来よりも強くなりました。厳格に言って、ヨハネの繕うことは回復の開始です。

Ⅱ. キリストのパースンと信条の起源に関する議論

教会歴史によれば、一世紀の終わりから始まった、キリスト論と関係のある大きな論争がありました。この論争は、どのようにしてキリストが神と人の両方であり得たかに関してでした。ある人たちは、キリストが神でなかったと言いました。他の人たちは、キリストが肉体において来れられたのではなく、人ではなかったと言いました。ですから、ヨハネは彼の福音書を書いて、キリストが神でないという異端に反論したのです。ヨハネによる福音書の最初に、「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった」(ヨハネ1:1)。このことはイエスが神であることを綿密に見せています。ヨハネはまた彼の第一の手紙を書いて、キリストが肉体において来られたのではないという異端に反論しました。325年に、ローマの皇帝であるコンスタンティヌス大帝は、キリストのパースンに関する論争と関わりのあるすべてのキリスト教の教師を二ケアでの会議に集めました。今日に至るまでカトリックとプロテスタントは二ケア信条を堅固に保持しており、それを信仰の基本的な信条として尊重しています。

六世紀には、クリスチャンの中でキリストのパースンに関する異なる七つの学派が存在しました。第一の学派は、キリストには神性があるが、人性はない、すなわち、彼は神であって、人ではないというものです。第二の学派は、キリストには人性だけがあり、神性はない、すなわち、彼は人であるだけであり、神ではないというものです。第三の学派は、キリストには神性があるが、彼の神性は不完全であるというものです。第四の学派は、キリストには人性はあるが、彼の人性は不完全である、すなわち彼には人の体と魂があるが、人の霊はないというものです。第五の学派は、一人の人が二つの性質を所有することはできないので、キリストの神性と人性は区別があり、分離されているというものです。第六の学派は、キリストの神性と人性が結合して、第三の性質を生み出したというものです。第七の学派は正統で、正確であり、聖書的です。この学派は、キリストには神性と人性の両方があり、両方の性質が完全で、ミングリングされている(混ざり合わされている)が、第三の性質を生み出さないというものです。これは、キリストが真の神であり、また真の人であることを意味します。彼は神であり人であり、人であり神です。彼には神聖な性質と人の性質の両方がありますが、彼は依然としてひとりのパースンです。これが聖書におけるキリストのパースンの啓示です。

キリストのパースンに関する七つの学派

学派学派の主張内容の詳細
第1の学派キリストには神性があるが、人性はないキリストは神であって、人ではない。
第2の学派キリストには人性だけがあり、神性はないキリストは人であって、神ではない。
第3の学派キリストには神性があるが、彼の神性は不完全である神性があるが、それは完全ではない。
第4の学派キリストには人性があるが、彼の人性は不完全であるキリストには人の体と魂はあるが、人の霊がない。
第5の学派キリストの神性と人性は区別があり、分離されている一人の人が二つの性質を所有することはできないと主張。
第6の学派キリストの神性と人性が結合して第三の性質を生み出した神性と人性が融合し、全く新しい性質が誕生したと考える。
第7の学派キリストには神性と人性が完全にミングリングされている(正統的立場)キリストは真の神であり、真の人。神性と人性は完全にミングリングされているが、第三の性質は生まれない。

このように、およそ2000年前、主イエスが生まれ、33年半地上で生活し、死んで、葬られ、復活し、昇天し、聖霊が下ってきて、教会が生まれました。この後、100年足らずで教会の中にグノーシス主義などの異なる教えが忍び込み、教会は堕落しました。また六世紀には、キリストのパースンに関する七つの学派が存在するほどに、真理に関しても混乱していました。これが教会歴史の出発点であり、このために神は回復の働きを必要とされました。

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【全10記事】教科書には載らない教会歴史

【PART1】主の回復の出発点(1世紀〜4世紀)

【PART2】教会の堕落(5世紀〜15世紀)

【PART3】マルチン・ルターと宗教改革(16世紀)

【PART4】内なる命の経験の回復(17世紀)

【PART5】モラビア兄弟団による教会生活の開始(18世紀)

【PART6】ブラザレンによる回復された教会生活(19世紀)

【PART7】英国、南米、米国における主の回復(20世紀)

【PART8】中国における主の回復の開始(20世紀)

【ダイジェスト版】教科書には載らない教会歴史

隠されてきた真の教会歴史 – 主の回復とは?-

参考資料

・召会と地方召会の歴史 ウィットネス・リー著

・召会の行程 ウィットネス・リー著

・ウィットネス・リー全集 1981年第二巻(上)「主の回復の歴史と啓示 第一巻」

・「回復訳聖書 フットノート」ウィットネス・リー著
出版元:日本福音書房

※ 本記事で引用している聖句に関して、明記していなければすべて回復訳2015からの引用です。
「オンライン聖書 回復訳」

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